客車列車には旅情が感じられた。 木張りの郷愁を感じられる車内、機関車のかすれたような汽笛のあとに、おもむろにゴトンと動き出す出発風景、走っているときは轍の音以外の余計な音はしなかった。 昭和50年代半ば、旧型客車は全国各地で活躍していた。 特に蒸気機関車がその活躍末期まで主力だった線区では、近代化で機関車は置き換えられたが、客車は引き続き使用され続けられることが多かった。