明延鉱業(兵庫県)

(昭和56年訪問)




明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

明延鉱業所の人車列車
鉱山のある明延と選鉱所のある神子畑を結んでいた
これが人車列車のスタンダードな編成
明延で出発時間を待つ






私が初めて明延鉱山の軌道の存在を知ったのは確か模型誌に掲載されていた記事だと思う。
そこに載っていたモノクロ写真には何とも愛嬌のある形をした車両たちが写っていた。
鉱山のある明延と選鉱所のある神子畑を結ぶ軌道は長いトンネルで結ばれていて、そこを走る人車には関係者は一円で便乗出来るとその記事には記してあった。
しかしその本は既に発行から何年も経過していた。
その本に載っていた別の記事には木曾森林鉄道や頸城鉄道が記載されていたが、どちらもとうの昔に廃止になっていた。
不安に思いながらも調べてみると、なんと明延の鉱山軌道は存在していることが判明した。
さっそく鉱山事務所に問い合わせてみると訪問・見学の許可を得ることができたので夜行列車を乗り継ぎ訪問した。




明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

人車列車の牽引機のTL
1号機かと思いきやよく見ると15号機









明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

人車列車の次位に連結されている客車『くろがね』号
ボギー台車の立派な客車









明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

3両目の客車『わかば』
こちらは2軸客車









明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

人車列車の4両目
物置か犬小屋に車輪を付けたような車両
バックは明延鉱山の施設









明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

最後尾のTL
人車列車はプッシュプルの編成となっていて機回しを省略している









明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

『くろがね』号の車内
屈まなければ乗れない









明延鉱業の鉱石輸送列車 ナローゲージ

鉱石輸送列車
TLの次位に無線機器を積んだ車両が連結されていて総括制御されている
鉱石を満載して神子畑に向かう

明延









明延鉱業の鉱石輸送列車 ナローゲージ

長大な鉱車輸送列車

神子畑









明延鉱業の鉱石輸送列車とホッパー施設 ナローゲージ

鉱石輸送列車とホッパー施設

明延









明延鉱業 電動客車 赤金号 ナローゲージ

連絡用のモーターカー『赤金』号









明延鉱業 電動客車 白金号 ナローゲージ

連絡用のモーターカー『白金』号









明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

車庫で休む車両たち
右側次位の客車は『あおば』号
『わかば』号と同形の2軸客車






明延と神子畑を結ぶ軌道は762㎜だった。
そのほかに構内から508㎜の軌道が延びてきていて明延の構内の一部は3線軌道となっていた。
原始的な転てつ機や小さなターンテーブルなどがあって見ていて飽きなかった。




明延鉱業 508㎜ ナローゲージ









明延鉱業 508㎜ ナローゲージ

右側の軌道上の鉱車は508㎜の車両
手前には3線区間が垣間見える









明延鉱業 508㎜ ナローゲージ

508㎜軌道の小さなターンテーブル









明延鉱業 508㎜ ナローゲージ

508㎜坑内軌道のBL









明延鉱業 508㎜ ナローゲージ

508㎜坑内軌道の鉱車









明延鉱業 508㎜ ナローゲージ

762㎜軌道のある山の中腹から麓を望む
坑木積み込み用の508㎜軌道が見える









明延鉱業 508㎜ ナローゲージ

麓と事務所のある中腹を結ぶインクライン









明延鉱業の人車列車 508㎜ ナローゲージ

あまり使われていなさそうなズリ捨て設備









明延鉱業の人車列車 508㎜ ナローゲージ

下を見るとかなりの高さにある!






人車の乗り場には『社用の者・社員および家族以外には乗車できない』旨の看板が立てられていた。





明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

明延鉱業所の入り口に立てられていた看板






私たちが訪問する10年ほど前の昭和46年頃にマスコミにより『一円で乗れる電車』ということで大々的に報道されたことがあったそうだ。
その際に多くの人が訪問して鉱山関係者の注意を聞かないで業務に支障を生じたので関係者以外の訪問を禁じていた時があったそうだ。
私はそのようなことがあったことを訪問する直前に知った。
その為人車の乗車はあきらめていて、見学を許可してもらえるだけで十分だった。
せめて人車の出発風景を撮影しようと準備していると、出発時間間際に待合室に関係者の方が切符入れた箱を手にしてやってきた。
するとその人が『神子畑まで行ってきたら』と言ってくれた。
『本当にいいんですか?』と聞きなおした私たちに一円の乗車券を2枚ずつ渡してくれた。
私たちは大喜びで『くろがね』号の乗客となった。
人車は私たちが乗り込んで程なく出発した。
乗客は私たちだけだった。
車輪の振動が直接響いてくるような騒音で車内は会話もできないような状態だった。
素掘りの長いトンネルを白熱灯の明かりで進んでいく時間は貴重な体験だった。
神子畑で折り返しの時間いっぱいまで神子畑の構内を見学した。
神子畑から折り返して明延に着いた興奮が冷めやらない私たちは関係者の方にお礼をして帰路についた。





明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

人車列車の待合室









明延鉱業の人車列車 1円電車 ナローゲージ

人車の時刻表